■要旨 近年、医療制度改革を巡る議論で、「かかりつけ医」という言葉を頻繁に見掛けるようになった。例えば、新型コロナウイルスへの対応では、かかりつけ医への発熱相談などで、かかりつけ医の重要性が意識されたほか、オンライン診療を初診から認める特例の継続、外来医療の明確化などの文脈でも、かかりつけ医がクローズアップされている。 しかし、かかりつけ医は必ずしも制度的に位置づけられた単語ではなく、その意味は曖昧である。本稿は新型コロナウイルスへの対応やオンライン診療、外来機能の明確化など4つの論議で、「かかりつけ医」という言葉がクローズアップされている点を踏まえた上で、その機能や役割が曖昧な点を考察する。 さらに、かかりつけ医の制度的な位置付けが曖昧になっている背景として、30年ほど前の議論を振り返る。その上で、かかりつけ医を制度化しているイギリスやフランスの事例などを参考にしつつ、患者にとっての「医