2016年のプロ野球12球団合同トライアウトの会場となった甲子園球場のロビーで旧知のカメラマンと立ち話をしていると、彼がこんなことを口にした。 「そういえば、ことしは競輪の勧誘来てないなあ」 プロ野球の入団テストで競輪の勧誘? 話が飲み込めない。 よくよく話を聞いてみると、過去のトライアウトで球場に競輪関係者がパンフレットを机に並べ、競輪選手への転身を勧めていたことがあったのだという。人材不足に悩む競輪界は、元プロ野球選手が引退した年とその翌年に限り、競輪学校の第一次試験を免除するなどの優遇措置をとっていると聞いたこともある。たしかにずば抜けた体力を持つプロ野球選手のセカンドキャリアとして競輪はぴったりかもしれないが、復活のワンチャンスにかける真剣勝負の場で勧誘するというのは配慮が足りないのでは……。 そんなふうに思ったのは、トライアウトの現実を知らなかったからだ。 「合同入団テスト」とは
![事実上トライアウトは引退の儀式か。選手たちに諦念が漂っていた理由。(芦部聡)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/1beb40e21d86e6a5eff32f51899cc664fa4b1ece/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnumber.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Fd%2F4%2F-%2Fimg_d4a8c0a33768bdd63c42349d4c87be3995699.jpg)