上部に必要以上に余白が設けられた「笈の小文」の冒頭(左)。本文スペースがほぼ同じ大きさの「おくのほそ道」がすっぽりと収まる(奈良市の奈良大で) 松尾芭蕉の紀行文を収めた「笈(おい)の小文(こぶみ)」で、初版とされる京都・平野屋発行の版本が、ロングセラーとなった「おくのほそ道」ブームに便乗して体裁をまねたうえ、〈著作権法違反〉だった可能性が高いとの新説を、奈良大の永井一彰教授(近世国文学)がまとめた。本文のスペースがほぼ同じなうえ、表装が酷似しているなど海賊版が横行した江戸時代の出版事情がうかがえ、7日に兵庫県西宮市の関西学院大で始まる日本近世文学会秋季大会で発表される。 平野屋版は、奥書に宝永6年(1709年)刊行と記され、当時主流だった半紙本(縦約23センチ、横約16センチ)で、本文の上部などに必要以上の余白があるため、永井教授が調査した。本文のスペースが、枡形(ますがた)本(縦約17セ