母は無事、ホテルのお泊まり会に出て行った。 夜、携帯に陽気な声で電話がかかってきた。 「連絡遅くなってすみませーん」 その陽気な声に一瞬誰かと思った。 普段私に接する時の、上から見下ろすような雰囲気とは違い、まるで親元から旅行にでた思春期の娘が夜になったら連絡しなさいよと母親と約束していたのをうっかり忘れていたかのような、そんな声。 「もうね、夜景がすっごく、すっごく綺麗。観覧車も見えて、すごいのよ。あなたが連絡しておいてくれたからきっといい部屋になったんだと思う、ありがとうございますぅ」 酔っているのだろうか。後ろから友人二人がきゃっきゃきゃっきゃ笑いながら何か叫んでいる。 よかった。喧嘩していない。 出発する日の朝、私のやることだから何かミスをしていないか不安で確認の電話をホテルに入れた。 メールに前日予約確認が来ていたが、それでも心配で確かめた。なにしろ、一度キャンセルした旅行の復活