老後資金が約2000万円足りなくなるとの金融庁の報告書が波紋を広げた2019年。生活不安は高まりばかり。だが、「1カ月の生活費は約8000円で、4月に引っ越してきて以来、ごみを捨てたことがない」と、さりげなく話す40代の男性のような生活を送る人もいる。 生活費が安いので賃金を稼ぐための仕事に就く必要性はない。「何をやるかの基準は楽しいか、楽しくないか」。こんな生活も今の日本では可能と聞けば、少しは安心できるのではないだろうか。 「時間売る生活にうんざり」 男性は都内の新聞配達会社で20年間勤務し、営業や労務管理などの仕事に就いていた。給料は決して高くなく、外食やコンビニ弁当の購入、友人や知人との飲み代などで月の支出は15万~20万円に上った。自分の時間を切り売りするような生活の中で、頭に浮かんだのは、小さい頃から憧れていた田舎暮らしだった。「おばあちゃんが田舎に住んでいて夏休みは楽しかった