もてるよねえと女たちは言う。可愛いものねえと私も言う。そんなことないですよおと彼女はこたえる。その回答はありふれているのにとても愛らしく、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい視線とともに発せられる。私は感心して、それから、言う。ねえ、もう会社辞めるんだし、いま利害関係のある人は残っていないでしょう。もてる秘訣でも教えて頂戴よ。なにしろ今日は女子送別会。あなたが女性ばかりで行きたいと言ったときにはちょっとびっくりしたけど、まあ、わかるよ、あなたはもてるから、退職ともなると男どもがいつにもましてうるさくて、そしてあなたがうるさくしてほしい人はうちの会社にはもういないってことだよね。 彼女はうふふと笑う。ワイン、もう一本、ボトルで取っちゃおうか、と私はけしかける。いいですよ、私は先輩だから、リストのこのあたりまでならご馳走できますよ。彼女は絶妙なタイミングで顔の前に手をあげてそれを動かし、否定