2010年2月、アメリカの専門誌・JAMA(アメリカ医師会ジャーナル)に掲載されたツタンカーメンの記事は世界を震撼させるに足るものであった。 それはツタンカーメンが近親相姦によって生まれた子であり、生来の虚弱体質に悩まされ、さらに死因がマラリアという衝撃的な内容である。その事実は、すぐさま『マスクを脱いだツタンカーメン』というドキュメンタリー番組でも放映され、世界中の人々に知られるところとなった。 しかしその後、外部の専門家から調査結果の信憑性について異議があがる。古代DNAの大半が、現在抽出できるレベルで残存していなかったのではないかという指摘を受けたのである。それは同じ雑誌の小さな投稿欄に掲載された記事に過ぎなかったのだが、実力ある科学ジャーナリストが見逃すわけもなかった。それが本書の著者、ジョー・マーチャントである。 報道と真実の間には、はたして何があったのか?かくして世界で最も有名