今回お話をうかがったのは英国で靴作りの神髄を習得された靴職人の山口千尋さん。僕は英国に滞在したことがあり、英国での靴に関する文化は少し見聞きしていたが、その本質は理解していなかった。今回のお話は、本物の靴とはどういうものであるか、大変情報量の多いものだった。 日本の履物の文化では草履が一番理想で、僕にとっての心地よい靴はぶかぶかでピタッとしているのは嫌だと思っていた。山口さんのお話では、本当の靴というものは踵が手で包まれているようなものであるとか、ヨーロッパまでの飛行機の中でもずっと脱がないでいるものだといった、それくらい精密に作られているものだということが分かった。 こういうことは、英国の良質な靴を履いている文化の中では当たり前のことだが、日本では当たり前ではない。その本当の文化を伝えようとすると、非常に手間がかかるけれど、ずっとライフワークとしてとして続けていけるくらいの広がりがある。