Text: Masako Iwasaki 2015年、米コロラド州デンバーのドゥル小学校で3年生を受け持ったカイル・シュワルツ先生が、教室で1枚のプリントを配った。 そこには「先生が知っていてくれたらなあ(I wish my teacher knew)」という一文と、罫線が印刷されていた。自分のことや家族のことを自由に書いてもらい、生徒のことをより深く知ろう、というわけだ。後日、シュワルツ先生は衝撃を受けることになる。 回収したプリントには、「私は家ぞくが大好きなんです」などの天真爛漫な回答に混じって、貧困、親の不在、家族の病気に苦しむ声が数多く見てとれたのだ。 「パパは2つの仕事をしていて、あまり会えません」 「私と家ぞくはシェルターにすんでいます」 「家で宿題をするえんぴつがありません」 「音読カードにサインがないのは、ママが家にあんまりいてくれないからです」 「パパに会いたいです。パ