厚生労働省は、今国会で「労働安全衛生法改正案」の成立を目指している。これは職場の受動喫煙防止を目的に全面禁煙または空間分煙を迫るものだ(現在修正案を検討中)。 これによって「分煙」はこれまでのマナーの領域から義務へと大きく変わる恐れがある。本格的に「規制・撲滅」に動き始めた国の動きをどう見るか。現代史家・秦郁彦氏が、「たばこと健康被害」の観点から論じる。 * * * そもそも「非喫煙者でも副流煙によって被害を受ける」という論理を盾に受動喫煙というリスクを広めたのはWHO(世界保健機関)である。 実は、世界で初めて受動喫煙という概念を打ち出したのは日本人である。故・平山雄が提唱した「平山論文」がその端緒であり、その後の一連のたばこ規制の理論的支柱となってきた。 平山は満州医科大学を卒業後、旧厚生省国立公衆衛生院技官やWHO勤務を経て、1965年から国立がんセンター研究所疫学部長を務めた。そこ