「その時が来れば、武器を手に取って戦う」「いざとなれば避難する準備はできている」―。ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まる前、2月中旬に記者が市民の声を聞いて回った印象としては、男性だと前者、女性なら後者の答えが多かったように思う。そのほとんど全員が「だけどまさか、ロシアが本当に攻めてくることはないだろう」と付け加えた。そして皆、なんとか普段通りの日常生活を保とうと心がけているように見えた。 プーチン大統領が欧米諸国を挑発し、自らの存在感を示そうというゲームに興じているにすぎない―。このような見方が、「まさか」の事態が現実になるまでの一般的な受け止め方だったはずだ。記者も同じように感じていた。ましてや首都キエフへの攻撃などあり得ない、と。 しかし、2月24日未明、ウクライナ全土への攻撃は始まった。一日で全ての様相は一変した。次々に殺されていく市民たち。自宅を追われ、逃げ惑う人々でごった返す駅