目が覚めたのは目が覚めてから。枕におよぐ数十本の髪の毛が僕を起こす。 いつからだろうか。こんな風に髪がなくなっていったのは。自覚がなかったとは言わない。見て見ぬ振りにも限界はあった。それでもこの日の数十本の脱毛には驚きを隠せない。 どうしたものか。僕は24歳。一般的な男性と比較しても、この歳で髪の毛に悩みを覚えるなんて早すぎる。早すぎる。世間一般との比較が意味をなさないとは分かっていただけに、この例外的な脱毛が余計に僕を震えさせた。 僕の脳天ははげかかっている。広がった額を隠すために残りわずかとなった前髪をかぶせてみる。隙間だらけの額がみせる様は、まるでゲレンデから眺める野山のよう。すっかりと葉を落としてしまった木々が、純白の雪に覆われて一心に寒さをしのいでいる。彼らが待つのは春。僕が待つのは何もない。 そうは言っても現実と向き合わなければならない。すっきりしてしまった脳天部と寒風に打たれ