もはやいうまでもないことだが,日本経済はバブルの崩壊後,長期停滞に陥っている。この憂うべき現象は,「失われた90年代」と呼ばれるが,長期停滞が90年代で終わる気配はない。国際比較の方法にもよるが,日本の一人当たりGDPは,バブル華やかなりし1990年前後でも,アメリカの8割にとどまる。いまではその差はさらに拡大してしまった。経済成長論でよく知られているように,技術知識が国の間で自由に移動できれば,各国のGDPは同じ水準に収束する。後発国は当初は先進国よりも高い成長率を示すが,資本蓄積が進むにつれて,後発国の一人当たりGDPは,先進国の水準に収束する。日本が80年代にアメリカの2%より高い成長を示したのは,このような標準的な成長理論で理解できる。しかし90年代に成長率が2%に収束するどころかそれより低い水準にとどまっているのは,どう説明すればよいのだろうか。私の研究は,この極めて重要な問題を