前回ご紹介した『チベットの生と死の書』(ソギャル・リンポチェ著/講談社)から、もう少し「カルマ」に関する記述を拾ってみたいと思います。 私たちの心には「通常の心の基盤」と呼ばれるものがある。そのことを14世紀の傑出したチベットの師ロンチェンパは次のように語っている。 「それはいまだ悟りにいたっていない、どっちつかずの状態である。心と精神作用の範疇に属し、すべてのカルマの因(もと)となるものであり、輪廻と涅槃(ねはん)の道となるものである」。 それは倉庫のようなものだ。煩悩によって引き起こされた過去の行為による心理的刷り込みのすべてが、種のように貯えられているのである。条件が整ったとき、それらは芽を吹き、人生を取り巻く環境と境遇として現れる。 この「通常の心の基盤」は銀行のようなものだと思えばいい。そこにはカルマが心理的刷り込みと習癖という形で貯えられている。肯定的であれ否定的で