物語は死なない 令和に入って四年目の年を迎えた。「王冠」に由来する名前を持つあのウイルスの災禍は予想以上に長引いて昨年も完全な収束にはいたらずに今も未だ世界に暗い影をおとしている。言うまでもないことだが、この二年で世界はすっかり様変わりしてしまった。しかし、それでも変わらないものはある。世界がどんなに死に体になっても、物語は死なない。それは生き続ける。 有史以来、多くの人間が物語を求めてきた。なぜか。生きていくために必要だったからだ。とはいえ、物語は「食べられない」。飢餓を乗り越えさせたり、難病の人間を完治せしめる効果はない。世界が危機に陥った時、こういうものは「無意味」なものとして顧みられることはなくなる。生活する上で最低限必要なものではないからだ。だが、それでも人はどうしようもなく物語を必要としてしまう。「食べられる」ものだけでは満足できないからだ。「無意味」なもののなかに「意味」を見