誕生日だった。 この日ばかりはどうしても今までの自分の生き方について考えてしまう。 完全なる中年なのに結婚もしていない。子供もいない。毎日働いて慎ましく暮らしている。 単調な毎日だけど友達にも恵まれて、自分は本当に運が良かった。みんな愛しているよ。 けれど、幼い頃の自分がまだ心の中で泣いているな、と感じるときがある。 思春期の頃、当たり前のように実家に住んでいた自分は、いつも正解を探しながら暮らしていた気がする。 母親がルールの家庭だった。母方の祖父母と同居だったがいつも「母が怒るから」と母親が優先された。 そのため、母と誕生日が近い私にお祝い用のケーキを選ぶ権利はなかった。いつも母の食べたいケーキが用意された。 祖父母がいつも困った風に言う。「私は聞き分けがいいから助かる」 ずっと良い子でありたいと思っていた。可愛がってもらいたいと。 同じく思春期の兄弟はどんどんおかしくなっていった。家