“とうとうここまで来たか”という感慨がありますか? と問うと、まっすぐ目を見ながら是枝監督は即座に否定した。 「それはまったくない。階段を上ってきた、みたいな感覚はまるでありませんから。でも、先日アカデミー賞前哨戦の長い戦いが終わってノミニーが集まるランチ会に参加したらレディー・ガガがいた。『バイス』のクリスチャン・ベイルに会えたり、洗面所に行ってふと隣を見たらウィレム・デフォーだったりで、今はもう、ただただミーハーに楽しんでる(笑)。英語がしゃべれればデフォーに『フロリダ・プロジェクト、観ましたよ』ぐらい言いたかったのに、英語となるとどうしても躊躇してしまって……。授賞式の会場で英語をしゃべっていないのは、僕と『ROMA/ローマ』の主演のヤリッツァ・アパリシオさんの二人だけでしたよ」 日本を代表する映画監督として多忙な日々の中、まだ春の気配の遠い都内某所にて 昨年のカンヌ国際映画祭で『万