数年前,ある青年相手のカウンセラーからこんな話を聞いた。すぐに暴力をふるってしまう相談相手の若者と接していると,以前に学んだこととは違う印象を受けるというのだ。「暴力に走る若者は自己評価の低さ(劣等感)に苦しんでいる」と教科書には書いてあるのだが,実際の若者たちは過大な優越感と特権意識を持っているように見えた。 攻撃性が自己評価の低さに根ざしている,という見方は長い間一般的な知識として浸透してきた。しかし,この理論を裏付ける実証的証拠は言うに及ばず,その理論を公式見解として示した本や論文は見つからなかった。誰もが知っているものの,証明した人は誰もいないのだ。 自信がなく,自分はだめな人間だと思うタイプの人は,恥をかかないようにするのに必死で,自分の優越性を証明してやろうなどという欲求はまったく出さずに,人生をどうにかこうにかやり過ごしている。攻撃するには危険が伴う。自己評価の低い人は危険を
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