第2節 薬物問題の現状 1 乱用される薬物 現在、我が国でその乱用が問題となっている主な薬物の特徴は、以下のとおりである。 (1) 覚せい剤 覚せい剤とは、一般的には、眠気を覚まし、疲労感を除去する目的で用いられる中枢神経興奮剤の総称である。ここでは、そのうち覚せい剤取締法第2条に定められているフエニルアミノプロパン(一般名アンフェタミン)及びフエニルメチルアミノプロパン(一般名メタンフェタミン)について述べる。アンフェタミンとメタンフェタミンは、非常に類似した化学構造を有し、同様の薬理効果を発現する。現在、我が国で乱用が問題となっている覚せい剤は、ほとんどがメタンフェタミンであり、通常、塩酸塩の状態で密売、乱用されている。 覚せい剤には、中枢神経興奮作用があり、健康な人が塩酸メタンフェタミン1ミリグラムから5ミリグラムを摂取した場合、眠気が覚め、気分が壮快となり、疲労感がなくなる。さらに