未知を愛するノンフィクション作家・高野秀行が見つけた新たな未知は、「リアル北斗の拳」と呼ばれるソマリアのなかにある謎の独立国家「ソマリランド」だった。 そこは崩壊国家の一角で独自に内戦を終結し、複数政党制による民主化へ移行した平和な国だという。本当なのだろうか? 情報はほとんどなく、確かめるには自分の目で見てみるしかない。高野秀行の渾身の辺境旅が始まった。 1.ソマリランド観光案内 ベルベラでの海賊取材が終わると、私たちは日帰りや一泊の小旅行を繰り返した。その合間には「フリータイム」と称してハルゲイサ市内を散策。ほとんど観光旅行である。 すべては大統領スポークスマンであるサイードの作った旅程に従ったまでだ。まるで老舗の寿司屋で「お任せ」を頼んだように次から次へと目を瞠るものが出てくる。唯一の誤算はこの「お任せ」が老舗の寿司屋並みによいお値段がしたことくらいで(しかも合計額はあとになって