今を生きること福島第一原発から約22kmの地で生き、今も遺体捜索を続けながら故郷を再生しようと活動する上野敬幸さん。フォトジャーナリスト・渋谷敦志が出会い見つめた、あるひとりの父親の3.11から今日まで― 震災の日から一年を前にした2012年3月10日。僕は福島県南相馬市原町区の萱浜(かいはま)に到着した。海沿いの土手に立ち、色彩を失った荒野を見渡す。「あのへんであの人と最初に会ったんだよなぁ」。刺すように冷たい浜風を受けながら、震災直後のことを思い出していた。まだ一年なのか。もう一年なのか。時は流れている。けれど、ここに来ると、どうしても時計の針が止まったままのように思えてならない。 3月11日はあの人といようと決めていた。上野敬幸(うえのたかゆき)さん。39歳。南相馬で最初に出会った人であり、彼の存在は脳裏にとりわけ強く焼き付いている。その上野さんが家族の一周忌に葬儀を行うという。 海