ある日突然難病を発症し、先進国であるはずの日本で「難民化」した自らの姿をリアルに描きながら、医療や福祉制度の深刻な現状を社会的な問題として浮き上がらせた『困ってるひと』(ポプラ社)。著者は福島県出身の作家、大野更紗さん(27)。同書は、大学院生としてミャンマー(ビルマ)の難民支援活動の研究を志していたなかで、病を発病して支援される側の立場に立ったことで、新たに見えてきた世界を独特のタッチで綴った。 その大野さんが5月21日、これまでメディアに語ってこなかったことを話してくれた。福島県出身者として、作家として、事故を起こした原発をどう見ているのだろうか。そしてなぜあえて今、話すのか。 「原発事故が起きることは、わたしにとっては『とっくの昔に知っていた』ことでもあります。知っていた、という表現には、語弊がありますね。東日本大震災が起きたとき、真っ先に脳裏に浮かんだのは『メルトダウンする』という