祈るような気持ちで記憶から呼び起こす夏がある。僕は17才で、県立高校に通う三年生で、夏休み明けの体育祭に向けて毎日パーティーのように盛り上がる周囲に自分をうまく溶け込ませられないでいた。 わけのわからない熱狂に身を投じるのはどうしてもイヤだったし、正直言って、僕にとっては体育祭の仮装大会よりも公開間近のターミネーター2のほうがずっと大事件だった。当然のサボタージュは、クラスメイトからは「皆でやってるのだから」と呆れられた。そこが居心地のいいことはわかっていた。同時に自分の居場所ではないことも。僕は吸い込まれるようにゲームセンターに足を運び、コインを投げ入れ、クラスメイトが聴かないような外国のロックンロールを聴いた。 17才の僕には薄々わかりはじめていたのだ。自分がスペシャルではないことが。薄々、だが確実に。そこから孵化する焦りや絶望は、僕の首のあたりを掴み、ぐらぐらと揺さぶって離そうとしな