グーグル詰め コリィ・ドクトロウ おおしまゆたか=訳 「これ以上高潔な者はいないという人間の書いたものを、 なんでもよいから6行分持ってきたまえ。 書いた人間を縛り首にする口実を必ず見つけてしんぜよう」 ――リシュリュー枢機卿 「われわれはまだあなたについて十分知ってはいませんよ」 ――グーグルCEO エリック・シュミット グレッグがサンフランシスコ国際空港に降りたったのは午後8時だった。が、 税関に並んだ列の先頭に来たときには真夜中を回っていた。ファースト・クラ スから出てきたグレッグは真黒に灼け、不精髭をはやし、動作もしなやかだっ た。カボの海岸でひと月過ごしたおかげだ(週に3日はスキューバ・ダイビン グ、残りはフランス人の女子学生をひっかけて過ごした)。ひと月前、街を離 れたときには、猫背に腹のつきでたボロクズだった。ひと月後には褐色の神さ ながらで、客室前方に立つスチュワーデスたち
『いちばん高潔な人物の書いた文が六行もあれば、 その中に彼を吊るす理由を見つけてみせよう』 ――リシュリュー枢機卿 『私たちはあなたのことをもっと知りたいのです』 ――グーグル最高責任者 エリック・シュミット グレッグがサンフランシスコ国際空港についたのは午後8時、だが税関の行列にたどりついたときには夜中を過ぎていた。ファーストクラスから降り立ち、ナッツのように茶色く焼けて、剃らないままの髭、カボで過ごしたひと月のあとで柔軟そのものの身体(週に3日のスキューバ・ダイビング、残りの時間はずっとフランスの女子大生たちをナンパすることにあけくれた)。ひと月まえにこの街を後にしたとき、グレッグは猫背で腹の突き出た廃人だった。いまやグレッグはブロンズの神となり、キャビン前方の席でCAたちからの熱い視線を引き寄せていた。 税関の列に並んで4時間後、グレッグは神の座から引き降ろされ、ただの人になっていた
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