道徳性に関する文化的淘汰モデルと情報倫理教育 伊勢田哲治 人 において道徳性がどのようにして発生し、維持・発展されてきたか、という問題は 年の 進化心理学的なアプローチの進展もあり、 常に活発に議論されている。本稿では、こうした議 論の中でも、特に文化的淘汰のプロセスに基づく道徳 源・維持のモデルを紹介し、そうしたモ デルが仮に正しいとしたときに情報倫理教育を考える上でどのような含意があるか、ということ を考察する。 「道徳性」という 葉はさまざまな意味で使われるので注意を要する。道徳 源・維持につい ての理論においては、通常、「人間が他人に対して配慮する」ことや「人々の間に広範囲な協力 的行動がみられる」というようなことが被説明項となっている。一 で えば、利他的な行動や 心情が「道徳性」の核(少なくとももっとも説明を要する 分)だと考えられているわけである。 しかし、もう一歩つっ