保険金殺人事件で逮捕されたのは、8年前に「死んだ」男だった。千葉県松戸市で平成21年、阿曽久好さん=当時(52)=を自殺に見せかけ殺害し、保険金約2000万円をだまし取ったとして、殺人と詐欺の罪で起訴された元合鍵作製会社経営、西村豊被告(56)。15年には、自分自身も死んだように偽装し、保険金約計9000万円をだまし取る詐欺も犯していた。戸籍を失い、他人になりすまして生きていた西村被告の偽装工作は、わずかなほころびから破綻した。捜査関係者や知人らの証言から事件の実像を再現する。“偽装”の原点…自ら死亡を“演出” 平成15年。当時、中古自動車販売会社を手がけていた西村被告は、追い込まれていた。資金繰りのため、社員にまで借金を要求する日々の中で、後に阿曽さん殺害に繋がるとみられる犯行を計画するようになる。 「自分を死んだように装って、保険金を得よう」 西村被告は、実在する医師の名前を使い、心筋