位相最適設計ツールは,非常に多くの設計変数を扱うためこれまでは適用対象は専ら線形弾性問題に限られてきた.しかし,近年の計算機の性能向上は目覚ましく,今後は非線形問題への適用が期待される.著者らはCAEによるコスト削減効果が高いと言われる自動車衝突安全設計に着目し,これに役立つ位相最適設計ツールの開発を念頭に,グランドストラクチャ法による3次元骨組み構造の衝突最適設計のアルゴリズムを提案した.本研究ではこの方向の研究の一環として,自動車車体設計で重要な位置を占めている薄肉鋼構造の衝突変形時の位相最適設計アルゴリズムを提案する.この最適化アルゴリズムでは最適化を行なう際に繰り返し実施する衝突解析には,自動車の衝突解析で一般的に使われている陽的時間積分法を採用し,要素として陽的時間積分法と組み合わせると非常に計算速度が速いことで知られるBelytschkoとTsayの1点積分シェル要素を使用する