「ここは随分マジメに取り調べるんですね」 形式的なボディチェックからは考えられないほど執拗に胸を揉まれた入国審査の不快感を若干思い出しながら、なんとはなしにつぶやいた私のぼやきは、疑問文になって返ってきた。 「イランはどうだった?いい国だったか?」 「旅行していてとても楽しかった。どこにいっても美しい街ばかりで、みんなおしゃれで知的だし、なにより優しいひとが多かった」 「いい面しか見ないからそんなことが言えるんだ」 そこはイランの北とアゼルバイジャンの南とを繋ぐ国境の街アスタラのアゼル側で、つまり らへん、そして横を向いたまま言った彼は税関で働く人間だった。 隣の国と言うのはどこにいっても近くて遠いのだと思いながら、私が口に出したきっとそうなんだと思うは思ったより小さく響いて彼の耳に届いたかはわからないまま消えてしまった。 「わかるだろう?ほんとにしょっちゅう、こんなことばっかりなんだぜ」
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