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2016年5月4日のブックマーク (3件)

  • 三井寺>連載>21世紀の図書館>詩人・石原吉郎(後編)

    ここ数年来、地元滋賀県にお住まいの詩人大野新さんの知遇を得、度々お会いする機会を頂いている。 それでいて、不明をはじるのだが、多田茂治『石原吉郎「昭和」の旅』を読むまで、 大野さんと石原吉郎との間にのっぴきならぬ交流があったことなどまったく知らなかった。 石原吉郎は、昭和三四年十月、大野さんの参画されている滋賀県の詩誌『鬼』の同人になった。 この時期、二人の出会いを決定的にしたのは、石原が自らの意志で自分の日記「ノート」と 「肉親へあてた手紙」を大野さんのもとに送り、 それを大野さん自らがタイプを打って同人誌『ノッポとチビ』三三号(昭和四二年九月)に公表されたことである。 この当時は、まだ石原の一連の散文エッセイも発表されておらず、おおきな衝撃を与えたという。 ここまで言わなければおさまらない石原という人間への何ともやるせない暗澹たる思いにさせる 「肉親へあてた手紙」、今日ではむしろ若ささ

  • 三井寺>連載>21世紀の図書館>詩人・石原吉郎(前編)

    石原吉郎は、大正四年(1915)生まれ。東京外語を卒業後、昭和十四年、二四歳の時に召集され、 陸軍露語教育隊高等科に送られた後にハルビンの関東軍特殊通信情報隊に配属された。 昭和二〇年のソ連参戦と日の敗戦によって関東軍は霧散してしまい、 十二月にソ連内務省に連行され、シベリアに抑留される。翌年一月にチタ到着。 梯団編成後、イルクーツク、ノボシビルスクを経てカザフ共和国を南下、アルマ・アタの収容所に収容される。 昭和二二年にはカラガンタ日軍捕虜収容所に移され、同二四年、 中央アジア軍管区軍法会議カラガンダ臨時法廷においてロシア共和国刑法五八条(反ソ行為)により起訴、 重労働二五年の判決を受ける。同年十月にバム鉄道(第二シベリア鉄道)を北上し、 沿線密林地帯のコロンナ三三収容所に到着、森林伐採などを行う。 昭和二五年の春にはコロンナ三〇に移動し、土木、鉄道工事、採石などの強制労働に従事する

  • 望郷と海 | みすず書房

    「彼はついに〈告発〉の言葉を語らなかった。彼の一切の思考と行動の根源には、苛烈で圧倒的な沈黙があった。それは声となることによって、そののっぴきならない真実が一挙にうしなわれ、告発となって顕在化することによって、告発の主体そのものが崩壊してしまうような、根源的な沈黙である。強制収容所とは、そのような沈黙を圧倒的に人間に強いる場所である。そして彼は、一切の告発を峻拒したままの姿勢で立ちつづけることによって、さいごに一つ残された〈空席〉を告発したのだと私は考える。告発が告発であることの不毛性から究極的に脱出するのは、ただこの〈空席〉の告発にかかっている。」 「人は死において、ひとりひとりその名を呼ばれなければならないものなのだ」 シベリアでの収容所体験の日々と戦後日社会に著者は何をみたか。解説・岡真理 I 確認されない死のなかで——強制収容所における一人の死 ある〈共生〉の経験から ペシミスト

    望郷と海 | みすず書房