ここ数年来、地元滋賀県にお住まいの詩人大野新さんの知遇を得、度々お会いする機会を頂いている。 それでいて、不明をはじるのだが、多田茂治『石原吉郎「昭和」の旅』を読むまで、 大野さんと石原吉郎との間にのっぴきならぬ交流があったことなどまったく知らなかった。 石原吉郎は、昭和三四年十月、大野さんの参画されている滋賀県の詩誌『鬼』の同人になった。 この時期、二人の出会いを決定的にしたのは、石原が自らの意志で自分の日記「ノート」と 「肉親へあてた手紙」を大野さんのもとに送り、 それを大野さん自らがタイプを打って同人誌『ノッポとチビ』三三号(昭和四二年九月)に公表されたことである。 この当時は、まだ石原の一連の散文エッセイも発表されておらず、おおきな衝撃を与えたという。 ここまで言わなければおさまらない石原という人間への何ともやるせない暗澹たる思いにさせる 「肉親へあてた手紙」、今日ではむしろ若ささ