最近雑誌でよく安冨歩という人が出てくる。「東大話法」とかいうので話題の人らしい。本人は経済学専攻で、東大東文研の教授である。まあこれはしかし、キャッチフレーズの問題で、普通は「官僚的な回答」とかいうのを「東大話法」と言い換えているだけだ。 ところが『一冊の本』4月号が届いて、この安冨氏が書いている。伊藤計劃の『虐殺器官』について、失敗していると言い、それはチョムスキーの言語学を用いたからだと言って、チョムスキー系言語学を否定するのである。私は別に、どこかの誰かみたいに、チョムスキーを否定するなんてけしからんと騒ぎはしないが、この人は筆致からするに、チョムスキー系の言語学についてちゃんと勉強したことがないのではないかと思う。 それはともかく、『ハーモニー』が良かったので読んでみたが『虐殺器官』は良くなかった。いかにも軍事的なディテールを描きこんでいるという文章もまずい。問題はあの「虐殺の言語
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