「僕らとしても力不足でした」 7月29日、都内の高齢夫婦の自宅。死亡が確認された83歳の男性を前に、主治医の田代和馬医師は静かに手を合わせました。 男性は末期の盲腸がんを患い、自宅で療養中でした。 「体調が悪化して、ちょっと様子がおかしい」 前日、妻からクリニックに連絡がありました。午後6時ごろに田代医師が訪問すると男性は意識がもうろうとした状態で、血液中の酸素の値、酸素飽和度も90%にまで低下していました。 新型コロナの感染が疑われ、その場で抗原検査したところ結果は「陽性」。 119番に電話して救急搬送を依頼します。 「消防庁です。火事ですか、救急ですか」 電話がつながるまでに1分か2分ほどかかりました。 「コロナウイルスで意識障害を伴う呼吸不全がみられます」 「救急車向かいますが、非常に救急要請が多いので到着まで1時間近くかかるかもしれないです」 「できるだけ早くお願いします」 このや