長かった夏が終わり、秋が来る。やがては冬が訪れる。季節は確かに巡りゆくのに、時間は循環したまま、永遠にそこに留まっていて、その世界の住人は誰ひとりとして年をとらない。死ぬものもいない。俗に「サザエさん時空」なんて呼ばれたりするこの時間感覚は、よく考えてみると相当におかしいのだけど、何しろ「サザエさん」といえば、僕が物心つくよりずっと前から放映されている国民的アニメなので、「それはもとよりそうしたもの」として受け止めていて、「なぜ、サザエさんは年をとらないのか?」なんてことを考えたことは一度もなかった。でも、この時間感覚は何かに似ているんだよなあ……そんな風に思いながらも、生活のなかで「サザエさん」のことを真剣に考える瞬間なんてそうあるものじゃないので、僕にとって、サザエさんが年をとらない理由は、謎とすらも意識できない漠然とした謎でありつづけていた。生まれ育った家を出て、ひとり暮らしをして、