「皮膚から出てくる虫を見たり、悪口を言われる声が聞こえたりしないんですか?」相手が真剣に質問しているにもかかわらず、私はつい笑みを浮かべてしまった。どう説明すれば良いか考えを巡らせたが、無いことを信じてもらう為の明快な説明はかなり難しく「ないですね・・・」と答えるのが精一杯だった。なぜ見えるのか、また見えないのか、何れも皆目検討もつかない。 質問は保釈時の身元引受人となってくれた友人の妻で、私が友人家族と寝食を共にすることになった保釈日の夜のこと。幼い娘さんもいる中で心配をされるのは当然のことで、更に言えば、借り入れた保釈金の保証人にもなっていた。もし、保釈中に逃亡や再犯があれば友人は借金まで負うことになる。加えて、日本中に知れ渡った犯罪者の私を家族ごと迎え入れることは容易なことではない。同様に非難されるなど考えられ得るリスクは多くあれど、メリットは微塵もない。 友人家族の話は表題と無関係