私たちの臓器を顕微鏡で見てみると、様々な種類の細胞が見事に空間的に組織化されているのがわかる。この見事さは顕微鏡や組織染色技術が開発されて以来、医学や生物学研究者を魅惑し続けてきた。その後遺伝子解析技術が進むと、この組織化の美は全て遺伝子発現の時間的、空間的調節の違いを基盤にしていることがわかってきた。この背景には、蛍光抗体法に始まる、組織内での個々の分子の局在を調べる様々な方法が開発され、多くの遺伝子の空間的発現パターンが明らかにされてきたことがあるが、特定の組織領域で発現している全ての遺伝子を調べる方法の開発は遅れていた。 その後、PCRが開発されると、少ない細胞から遺伝子ライブラリーを作成することが可能になり、小さな領域、あるいはそこに存在する一個の細胞が発現している全遺伝子を調べることが可能になっている。このおかげで、遺伝子発現の空間的・時間的制御のメカニズムの研究は一段と促進され