フィクション作品の内容はいかにして決まるのか。鑑賞者はフィクションの内容にどうアクセスするのか。フィクションとノンフィクションの違いはなにか。虚構的存在者(キャラクター)とはどのような存在者か。本書は、フィクションにまつわる広範な問いに一貫した答えを与えようとする野心的な試みである。 フィクションではない言明(例えば、信じていることの報告)を理解することは難しくない。会話の聞き手は、文字通りに伝えられる内容だけでなく、より深いところで話し手が暗に伝えようとしている内容でさえ特定できる。というのも、(1)現実世界のあり方に関する知識と、(2)話し手がそこから大きく逸脱しているわけではないという仮定があれば、相手の意図した内容を(平たく言えば)察することができるからだ。フィクションではそうはいかない。作品内の世界と現実世界のあり方はしばしば根本的に異なり、鑑賞者もそのことを踏まえている。現実世