「人間を生き残らせた出来の悪い足」という副題と、次の瞬間にはネコ科大型獣の餌食になるという惨劇を予想させる表紙カバーの絵に興味を引かれて、ふと手に取った本でした。序論と第一章では、二足歩行に対するわれわれの思い入れの強さが指摘されていて、ぐっと内容に引き込まれました。ところが54ページまで読み進めたところで、重大な問題にぶつかってしまったのです。そこにはこう書いてありました。 キリストトカゲにせよヴェロキラプトルにせよ、二足歩行の利点とは要はスピードだと思われる。ゴキブリでさえ、非常時には二本足で立ち上がって全速力で走る。 「ちょっと待て!」とわたしは思いました。ゴキブリは短距離ならば飛びもするし、普通でさえ、かなりのスピードでササササと走りまわりますよね。そこからさらに速度を上げるために、よりによって二本足で立ち上がって走ると!? いやいや、それはありえないでしょう。 第一に、ゴキブリの
着色された共焦点顕微鏡画像。等脚類の体がグラシラリア・グラシリスという紅藻の生殖細胞に覆われている。(PHOTOGRAPH BY SEBASTIEN COLIN) メキシコ国立自治大学の海洋生物学者で、ミミズのような形の海のぜん虫を研究するビビアン・ソリス=ワイス氏は10年ほど前、花を咲かせる海草の研究を行う同僚と話をしていた。 「花を採集するたび、小さな動物がびっしり付いている」と同僚は言っていた。このとき、2人はなぜ小さなぜん虫やエビのような甲殻類が海草に集まってくるのか、不思議だった。もしかしたら、ハナバチやチョウのように、彼らが植物の花粉を運んでいるのだろうか? そこで、ソリス=ワイス氏らはこれらの生物が海草の受粉を担う「送粉者」ではないかと考えた。2012年、その概要を「Inter-Research Science Publisher」という学術誌に発表した。 「最初の論文発表は
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