文 千紘 「やなこと全部忘れて騒ごうぜー!」 ――全部忘れたいほどのやなことは、別にないんだけどなぁ~。 アイドルのコンサートでこんな煽りを初めて聞いたとき、思わず心の中でツッコミを入れてしまった。しばしば、たくさんのアイドルから似たような言葉を聞く。お決まりのフレーズになっているのは、アイドルが仕事や家庭といった、日常からの「現実逃避」の象徴として成立してきたということだろう。 でも、私にとってはアイドルこそが一番の「現実」なので、どうにもこの言葉には違和感を覚えるのだ。 私の嫌なことは、仕事や恋愛で起こることではなく、コンサートのチケットが取れなかったり、新曲で推し*1の歌唱パートが少なかったりすることなんだけどな、と本気で思ってしまう。 なぜアイドル鑑賞という趣味が、私の中で一番の現実となって、喜怒哀楽を生産する頂点に君臨してるんだろうと、自分のルーツを振り返ってみた。すると、自分の