ヌーの溺死体の中でも、生態系への貢献度が高いのは骨である。ヌーの骨は完全に分解するのに約7年がかかり、ゆっくりと時間をかけてリンを排出する。リンは、植物や動物の成長に欠かせない。また、骨の表面はバイオフィルムと呼ばれる微生物の膜で覆われ、これが川の魚のエサとなる。 「川で死んだ動物の骨が何十年にもわたって生態系に栄養を与え続ける。大量溺死の遺産とでもいうべきものです」と、スバルスキー氏は言う。ナショナル ジオグラフィック協会は、スバルスキー氏が米エール大学在籍中に、その修士研究を支援していた。 米スミソニアン自然史博物館の地球化学者ケンドラ・クリッツ氏は今回の成果について、タイムリーな研究だと話す。ヌーの生息数が減ったり、大移動の規模が縮小した場合の影響が明らかになるためだ。クリッツ氏は、今回の研究には加わっていない。 「アフリカでは、人口増加や土地利用の変化によって、大型哺乳類が昔