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  • 「中、見ないでよ」 - 「中、見ないでよ」 -第1回ー(全7回)

    物心がつく前は別としても、僕の人生で僕が主役だったことは一度も無い。 15年しか生きていないが、多分これからも無い気がする。 クラス全体を見渡せる教卓に立っていても、この教室の中心に居る気がしない。 僕は今まで何かに打ち込んだ経験も無いし、それによって大きな挫折も味わいたくはない。 体育祭でクラスカラーに髪を染められるわけもなく、教室の隅の席の読モ並みの顔をしているあの娘の話しかけられるわけもなく、混雑している学で、ダンス部の人たちの隣が空席だったとしても、何となく座ることも出来ない。 人生の主役みたいな人たちと僕が、同じ高校生とは思えない。年齢や学力はそんなに離れているはずないのに。 偏差値で言えば都内の高校の平均よりは上だが進学校では無い、うちの高校。 そんな高校の教室で、僕はただ、ノート集めの為に教卓に立って待っているだけの背景に過ぎない。 そういうキャラはモブと呼ぶことを、部活の

    「中、見ないでよ」 - 「中、見ないでよ」 -第1回ー(全7回)
    doramata2
    doramata2 2018/12/24
  • 私の知らない他校の制服 - 私の知らない他校の制服 -第1回ー(全7回)

    「原則としてアルバイトは禁止」 「嫉妬」 「物理基礎の宿題」 「安いパックのお茶」 「デスソース」 「持ち出し禁止のハンドソープ」 「危なっかしい子」 「溶けそうなアイスの心配」 「私の知らない他校の制服」 ―――まだ、15歳なので。 うちの高校には細かい校則が無い。 きちんと校則を読めば、知ることも出来るだろうけど、”原則としてアルバイトは禁止”らしい、くらいしか私は知らない。 そのアルバイトも、クラスの3割はやっている。隠している人も少ないし、バレたところで何もない。 制服もあるにはあるが、私服も許されているので、指定通りに着てくる女子は1割もいない。 男子は私服のほうが面倒なのか、制服を着ている人が多いようだが、指定のワイシャツなど無いものだから、人によってバラバラ。 自分の高校を示すものが何も無い生徒の集会や登下校は、結構カオスだ。 これが、自由を尊重する私の高校の見た目だ。 私、

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    doramata2
    doramata2 2018/12/24
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 一年前の貴族院 その4

    無理に婚約を推し進めるより、ローゼマイン様やヴィルフリート様と笑い合える時間や関係。それを大事にしたいのだと、わたくしはようやくわかりました。側近達に背を向けるのではなく、向き合って意見を交わすことで関係が大きく変わることも実感しました。一年前の世界にやってきてからずっと失敗続きでしたが、これは大きな前進です。 ……何だか帰りたいですね。 何となくそう思いました。この一年前の世界ではなく、わたくしが自分でエーレンフェストとの関係を守った元の時間へ帰りたい、と。過去の世界ではなく、わたくしが悩んで我慢しながら、それでも、友好関係を大事にして生きてきた時間へ戻り、ヴィルフリート様にダンケルフェルガー式の求婚を行ったことをお詫びして、コルドゥラ達と向き合って関係を改善したいという思いがゆっくりと胸の中に広がっていきます。 不意に「貴女が未来の情報を開示することは厳禁です」という時の女神 ドレッフ

    ハンネローレの貴族院五年生 - 一年前の貴族院 その4
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    doramata2 2018/11/10
    久々の
  • ハンネローレの貴族院五年生 - ドレッファングーアの紡ぐ糸

    何もない白い世界にわたくしは立っていました。辺りを見回していると、不意に目の前に淡い黄色のヴェールをかぶった女性が現れました。高い位置で髪を結っているのがヴェールの形からわかります。顔の上半分は見えなくて、唇より下が見えるだけです。けれど、彼女からはわたくしが認識できるようで別方向を向くこともなく、こちらを見ています。近くにいるだけで逃げ出したくなるような圧力を感じ、何だが息苦しいような気分になってきました。 「ハンネローレ、貴女がわたくしに魔力を以て呼びかけくださって助かりました」 ……時の女神 ドレッファングーア!? そういえば、時の女神の悪戯する東屋で女神の名を口にした途端、わたくしの魔力によって魔法陣が浮かび上がりました。わたくしは別に呼びかけたわけではなく、挨拶をしただけのつもりだったのですが、目の前にいる女性が時の女神 ドレッファングーアであることは間違いないでしょう。向かい合

    ハンネローレの貴族院五年生 - ドレッファングーアの紡ぐ糸
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    doramata2 2017/12/30
    こういう展開になるとはー
  • ハンネローレの貴族院五年生 - ヴィルフリートの返答

    何が起こっているのかわからないようなポカンとした深緑の目が間近にあり、何度か瞬きをしました。わずかに開いていた唇が震えるように少し動き、「な、何が……」という小さな呟きが漏れました。そんな自分の声で我に返ったのか、ヴィルフリート様がケントリプスやオルトヴィーン様を気にして視線を動かし始めます。くっと動いたヴィルフリート様をわたくしは押さえ込みました。 「ヴィルフリート様、わたくしに条件をくださいませ」 「……条件? 条件とは一体……?」 ヴィルフリート様はただ困惑しているだけで、求婚の条件も断りの文句も口にはしません。押さえ込んだまま、どうすれば良いのか一瞬迷います。 「ハンネローレ様、ヴィルフリートはダンケルフェルガーの求婚をご存じないのでは?」 こちらの様子を窺うオルトヴィーン様の冷静な声に、東屋の外にいる護衛騎士達の困惑したような声が被さります。 「ハンネローレ様!?」 「ヴィルフリ

    ハンネローレの貴族院五年生 - ヴィルフリートの返答
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    doramata2 2017/11/07
    もしかして、やり直せる…?
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 求婚

    ダンケルフェルガーがエーレンフェストとの関係を望まないのであれば、わたくしは諦めることができたでしょう。けれど、ダンケルフェルガーの領主候補生がエーレンフェストの領主候補生に嫁ぐことをお父様が望んでいるのであれば、わたくしにも全く望みがないわけではありません。 ……今の状況をひっくり返すことができるかしら? わたくしは頬に手を当てて、少し考えます。側近でありながら今までそのような情報を出さなかったルイポルトを見つめました。ルイポルトもわたくしがどのような反応を示すのか確認しているように、じっとこちらを見ています。 ……側近達はわたくしがヴィルフリート様と星を結びたいと打ち明けたとしても、味方にはなってくれなそうですね。 瞬時にわたくしはそう判断し、少しでも多くの情報を得ることを優先させることにします。嫁盗りディッターの後の話し合いで、大領地との縁組みをアウブ・エーレンフェストは渋っていまし

    ハンネローレの貴族院五年生 - 求婚
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    doramata2 2017/10/14
    ハンネ様マジダンケルフェルガー
  • 本好きの下剋上 SS置き場 - ハルトムート視点 運命の洗礼式

    「夏に入るとエルヴィーラ様の御子様であるローゼマイン様の洗礼式があるでしょう? その方は領主の養女になることが内定しているそうです。わたくしはお城でお仕えすることになりました」 エルヴィーラ様との個人的なお茶会から帰ってきた母上は、盗聴防止の魔術具を握った状態でそう言った。私も同様に盗聴防止の魔術具を握っている。周囲の側仕え達の様子を軽く見回した後、私はゆっくりと口を開いた。 「……母上がエルヴィーラ様の御子様の側仕えになるのですか?」 騎士団長の第一夫人であるエルヴィーラ様と母上は非常に仲が良い。洗礼式を終える前から母上は私を連れて何度も遊びに行いっていたほどだ。だが、今までにエルヴィーラ様の娘と顔を合わせたこともなく、私はコルネリウスから妹の存在を匂わされたこともない。 ……エルヴィーラ様の実子ではないはずだ。 ならば、カルステッド様の第二、第三夫人の娘ということになるけれど、どちらも

    本好きの下剋上 SS置き場 - ハルトムート視点 運命の洗礼式
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    doramata2 2017/08/23
    “……引きずり落とすか……。”最初の出会いで完成されてしまったw
  • 本好きの下剋上 SS置き場 - ローゼマイン視点 定時報告

    アレキサンドリア寮にある自室の長椅子で、わたしは水色の大きいシュミル型魔術具を膝に抱えて向き合っていた。今は七の鐘が鳴った後、定時報告の時間である。 「この馬鹿者。ダンケルフェルガーと緊急のお茶会だと?」 ディナンから聞こえてくるのはフェルディナンドの声だ。この時間は可愛い魔術具がとてもお説教くさくなって、あまり可愛く思えなくなる。声が変わるだけでここまで可愛さが変わるなんて、何とも不思議だ。 ……ちょっとカラフルでファンシーな電話? うーん、電話には一歩届かないんだよね。 ディナンは手を繋ぐようにして魔石に触れている間しか声を送れないし、自分が送っている間は相手の声が聞こえない一方通行なので、電話と呼ぶにはちょっと機能が足りない。 実は貴族院に来る前に「また不測の事態が起こるのではないか」とフェルディナンドがあまりにも気を揉んでいた。そのため、わたしは少しでも安心させるために「いざとなっ

    本好きの下剋上 SS置き場 - ローゼマイン視点 定時報告
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    doramata2 2017/08/18
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 相談

    「お招きありがとう存じます、ハンネローレ様」 「ローゼマイン様、ようこそおいでくださいました。お休みの日である土の日にわざわざありがとう存じます」 「気にしないでくださいませ。土の日でなければ、今の時期はまだ側近達が動けませんもの」 挨拶をしていたわたくしは、ローゼマイン様と一緒にお茶会室へ入ってきた者達に驚いて目を見張りました。シュバルツ達のようなシュミルの動く魔術具がローゼマイン様を取り巻いています。 ……まぁ、なんて可愛らしいのでしょう! 「ふふっ、フェルディナンドが新しく作ってくれたわたくしの側近達です。薄い緑色がアドレット。資料の検索など、図書館のお仕事を専門にこなします。茶色がリサ、赤色がネリー。図書館における護衛に特化した魔術具で、を傷めないように戦います。普段はアレキサンドリア図書館を荒らす者を排除する図書館の守り手なのですが、貴族院ではわたくしの護衛騎士です」 ローゼマ

    ハンネローレの貴族院五年生 - 相談
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    doramata2 2017/07/14
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 音楽と疑問

    わたくしやローゼマイン様の側にいた者達が一斉に振り返り、コリンツダウムの上級貴族を見つめました。情報収集のために周囲で聞き耳を立てている者がいることは決して珍しくありません。けれど、聞きつけた内容をあからさまに口にする者は非常に少ないものです。 何だか嫌な気分になったわたくしがわずかに眉を寄せるのと、少し離れたところからこちらの様子を見守っていたらしいラザンタルクがツカツカと近付いてくるのはほぼ同時でした。 「僭越ながらアウブ・コリンツダウムに報告するには少々情報が足りないのではございませんか? その情報だけをもたらされては、ハンネローレ様への求婚が認められたように受け取られるかもしれません」 ラザンタルクが全く目の笑っていない笑顔を浮かべながらコリンツダウムの上級貴族を見据えます。獲物を見つけて栗色の目がギラリと光るのがわかりました。 「ハンネローレ様の父親であるアウブ・ダンケルフェルガ

    ハンネローレの貴族院五年生 - 音楽と疑問
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    doramata2 2017/07/08
  • 本好きの下剋上 SS置き場 - リヒャルダ視点 新しい姫様

    ヴェローニカ様が捕らえられたことによって城の中がてんやわんやになっている時に、わたくしはジルヴェスター様に呼び出されました。黄色の魔石に戻ってしまったオルドナンツを見つめ、首を傾げます。 「一体何のお話でしょう?」 「リヒャルダ、アウブのお考えをよく伺ってくださいませ。今回のような突然の出来事が何度も起これば、我々も動けません」 他の側近達が不安そうになるのも仕方がないでしょう。誰にも何の相談もなく、領主会議から抜け出してまでヴェローニカ様を失脚させるなど、とても今までのジルヴェスター様では考えられません。 カルステッド様を伴っていたこと、騎士団が迅速に動いたこと、事が神殿で起こったことを考えれば、ジルヴェスター様、カルステッド様、フェルディナンド様の三人だけが共有していた事態であることは推測できますが、勝手に行って良いことと悪いことがございます。 ……今回の件は「周囲への影響をよくお考え

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    doramata2 2017/06/26
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 髪飾りが起こす波紋

    リーゼレータを見送った後、お茶会室の片付けが終わって側仕え達の手が空くまでの間、わたくしは自室で待機です。給仕をする側仕えがいなくては、事を摂れないので仕方がありません。 少し動くと髪飾りの花が揺れて擦れる音がします。わたくしは鏡の前へ向かい、髪飾りを見ました。勝手に表情が緩んで、ふふっと笑みが零れます。リューツィの花の髪飾りにはとても繊細な美しさがあり、わたくしの髪の色によく合っていました。ローゼマイン様の専属の髪飾り職人は成人したばかりの年頃に見えましたが、当に見事な腕前です。 ……ヴィルフリート様やオルトヴィーン様も褒めてくださるかしら? 「素敵ですね。わたくしもエスコート相手から自分のための髪飾りをいただきたいです」 声が響いて振り返ると、護衛騎士見習いのハイルリーゼが羨ましそうに髪飾りを見つめていました。ダンケルフェルガーではエーレンフェストと取引があるので、既製品の髪飾りは

    ハンネローレの貴族院五年生 - 髪飾りが起こす波紋
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    doramata2 2017/06/19
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 求婚者の言い分

    ……困ります! 求婚の魔石もありませんし、わたくしの気持ちを確認する打診の言葉とはいえ、まさか講義中にこのような言葉を受けるとは考えていませんでした。同席されているヴィルフリート様も深緑の目を瞬かせながら、わたくしとオルトヴィーン様を困ったように交互に見ています。 「其方がハンネローレ様を慕っているとは知らなかったので私も驚いたが、ハンネローレ様も驚いていらっしゃるぞ。このように個人的な話は、せめて、私が席を外してからにすべきではないか」 ヴィルフリート様が困ったようにそう言うと、オルトヴィーン様は立ち上がって首を横に振りながら苦笑しました。 「このような講義中でなければ、側近達に阻まれて近付けないだろう? それに、二人だけになってハンネローレ様に良くない噂が立つのは意ではない。無理を強いるつもりはないから……」 「確かにそうだな。では、私が二人の潔白を証明する立場になるのでご安心くださ

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  • ハンネローレの貴族院五年生 - 講義中の情報交換

    親睦会の後は寮の会議室に最終学年の六年生、領主候補生、お兄様も含んだ領主一族の側近が集まって、それぞれが得た情報をやり取りします。階級で分けられて親睦会が行われており、交わされる噂話にも違いがあるため、ここで情報を共有しておくことは今後の社交において非常に大事です。 「ハンネローレ様、親睦会の様子はいかがでしたか?」 「そうですね。進級式で感じた様子よりも、元王族の領地代表者は落ち着いて話ができるように思えました。それから、リンデンタール、ベルシュマンなどの下位領地は、隣接していた中央領地がドレヴァンヒェルやブルーメフェルトに分けられたことに不満を持っているようです。それ以外は領主会議の報告とあまり変わりません」 彼等の口から出ていた言葉は「当に驚きました」という感想でしたが、ほとんど何の取り決めもないままに境界線が引き直されていたことに対する不満が感じられました。わたくしの言葉を肯定す

    ハンネローレの貴族院五年生 - 講義中の情報交換
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    doramata2 2017/05/26
    ヴィル兄の今後がやはり気にかかる
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 進級式と親睦会

    貴族院は講堂で行われる進級式から始まります。 進級式に向けてダンケルフェルガーは一番乗りで講堂へ入ることにしました。ラオフェレーグが誰彼構わずにディッターを申し込もうとしていることを側近の一人が教えてくれたからです。一番に講堂に入り、順位通りの一番前に整列していれば他領との接触を限りなく少なくできるでしょう。 「アウブと第二夫人の許可は取りました。貴族院でラオフェレーグが粗相をしないように、あの魔術具をラオフェレーグに付けてください」 ラオフェレーグの側近達に命じて、確実に「ディッターの誘い」を止めるための魔術具も付けさせます。ディッターの申し込みをさせないように強制的に声を奪う魔術具です。他領へ迷惑をかけそうなディッター狂いをこれで今まで何人止めてきたかわかりません。ダンケルフェルガーになくてはならない魔術具なのです。 「……わたくしはもちろん、ラオフェレーグにも第一位の領主候補生として

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    doramata2 2017/05/16
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 新入生歓迎ディッターと婚約者候補達

    一の鐘が鳴ると起床時間です。起きたらすぐに着替えて訓練をします。この訓練は側仕えや文官も含めて、全員が行うものです。早朝の訓練は側仕えに合わせた軽い運動で終わります。側仕え見習い達が着替えや朝の準備を始めるために離れると、領主候補生であるわたくしや文官見習い達は少し運動量が増えますけれど、騎士見習い達に比べると大した量ではありません。 ただ、今日は貴族院に入った翌朝なので、わたくしは側仕え達が離れるのと同じ時間に訓練を終え、自分の護衛騎士見習い達と採集場所の見回りをしました。ラザンタルクが採集していた素材の量が多く、採集場所の荒れ具合が心配になったからです。 ……案の定、ひどい有様でした。最終学年の者達が移動してくる前に気付いて良かったです。 見回りを終えると、自室に戻って水浴びをしてから朝です。朝堂で他の学生達と一緒に摂ります。その際に、寮監や領主候補生から連絡事項を伝えること

    ハンネローレの貴族院五年生 - 新入生歓迎ディッターと婚約者候補達
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    doramata2 2017/05/09
  • ハンネローレの貴族院五年生 - 入寮

    「ハンネローレ様、準備が整いました。出発いたしましょう」 今日は貴族院への移動日です。筆頭側仕えのコルドゥラに声をかけられ、わたくしはゆっくりと立ち上がりました。どうにも気分が沈んで仕方がありません。貴族院は楽しみな反面、とても憂になる場所です。 「しばらくの間、こちらの自室とはお別れですね。ハンネローレ様の貴族院での活躍について報告を受けるのを楽しみにしていますよ」 城に残る成人の側近達と別れの挨拶をして部屋を出ると、わたくしはコルドゥラと護衛騎士見習いのハイルリーゼと共に転移陣のある部屋へ向かいます。白い石でできた床を歩けばコツコツと音が響きます。戦勝祝いの宴で訪れたエーレンフェストの城では春でも厚いカーペットが敷かれていましたが、ユルゲンシュミット内では暑い地域であるダンケルフェルガーでは冬でも廊下に敷物を使いません。 「寮に着いたら、すぐに採集ですね」 「採集より先に癒やしを行

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    doramata2 2017/04/29
    前途多難だけどこれから予想外の展開になるのはさもありなんw
  • 本好きの下剋上 SS置き場 - エックハルト視点 ユストクスへの土産話

    「遅いではないか、エックハルト。其方のオルドナンツをどれだけ待ったと思っている?」 「待たせたとはいっても十日ではないか。大袈裟な……」 私の家にやってくるなり、そう訴えたのはユストクスだ。すでに亡くなっているのハイデマリーから同じことを言われたならば、私も「待たせて悪かった」と謝る気分にもなっただろうし、そもそも待たせなかった。 だが、三十代前半になっても自分の趣味である情報収集に没頭して、貴族としての作法を放り投げている男に嘆かれたところで、私は何とも思わない。いや、何ともではなく、少々陶しいとしか思わない。 目を通していた羊皮紙を机の上の束に重ねて置き、私は書斎までユストクスを案内してきた側仕えにお茶の準備を頼む。それから、ユストクスに視線を向けた。 「アウブやフェルディナンド様の命令による祈念式への同行の後だぞ。私としても其方と共有したい驚きが多い旅だったから、これでもできるだ

    本好きの下剋上 SS置き場 - エックハルト視点 ユストクスへの土産話
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    doramata2 2017/04/09
    来てたの気づかなかった('A`)ふたりともフェルディナンド好きすぎだろw
  • 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ - 帰宅

    夏の終わりの火の日。 今日はオレの成人式だった。エーレンフェストよりずっと人が多いアーレンスバッハの神殿へ、親ではなく旦那様やトゥーリ達に送り出されたのだ。 ……成人式が終わってから移動してもいいって言われたけどさ。 春の終わりにグーテンベルク達が一斉に移動することになった時、「家族と成人式を過ごしてからルッツ一人だけ後で移動するか?」と旦那様に尋ねられた。家族へ思い入れの深い誰かさんらしい気遣いだが、そんなことができるわけがない。 母さんには「トゥーリやギュンターが一緒だからまだ安心だけどさ、トゥーリとの星結びまでは見たかったね」と溜息を吐かれたけれど、父さんは「一人前になろうって時に仕事から離れるつもりか?」とわかりにくい言葉で激励してくれた。 「くぅ~、ここの神殿は大きすぎじゃないか!? ちっとも中の様子が見えなかったじゃないか。ルッツ、どうだったんだ?」 ギュンターおじさんはオレが

    本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ - 帰宅
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    doramata2 2017/03/12
    エピローグ最高の締めでした。連載お疲れ様でした!
  • 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ - 家族に繋がる道

    「やりすぎだ、馬鹿者。ギーベ達の大半が置き去りにされていたぞ」 「早くお祈りに慣れてくれればいいですね。わたくしとしてはきちんとお祈りをできる貴族が予想外に多くて、ハルトムート達の教育の成果に驚きましたけれど……」 「お褒めに預かり光栄です」 婚約式を終え、わたしは新しくできた研究所と図書館の見学に来ていた。大きな温室に香辛料の木が並んでいて、植物園という感じがする。見たことがないたくさんの木の中で、文官からこれまで研究してきた成果についての報告を受けた。やはり砂糖の栽培はまだ厳しいそうだ。 「温室がなければ枯れるので、大規模な栽培は難しいかもしれません。ただ、魔力を受けることで世代交代の度に少しずつ変化が見受けられます」 「代替わりで目に見える変化があるというのは面白いですね。わたくしも魔力を注ぎましょうか?」 魔力を注ぐだけならば得意だ。わたしは文官達に協力を申し出たけれど、フェルディ

    本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ - 家族に繋がる道
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    doramata2 2017/03/10
    “自分と一緒にいてくれるのがこの人で良かった”