孤立したSAから脱出、歩いて3時間半 道はえぐられ、赤土が至る所でむき出しになっていた。「歩いているのは自分なのに、映画を見ている感覚」。石川県輪島市の橋爪和夫さん(66)は、一変した光景を現実として受け止めきれなかった。 同県七尾市と穴水町にまたがる、のと里山海道別所岳サービスエリア(SA)で、観光物産店「奥能登山海市場」の店長を務める。のと里山海道は金沢市と輪島方面を結ぶ自動車専用道路。元日の能登半島地震で道はずたずたに寸断され、孤立したSAで利用客140人と一夜を明かした。店の棚を壊して薪にし、駐車場で火をおこして暖を取った。 2日朝、警察に電話がつながり、救助の見通しが立たないと知った。「ここで待つか、歩いて下山するか。皆さんで判断してほしい」。店に残る食料や土産品の菓子は自由に食べていいと告げ、里山海道を北へ歩き出した。輪島にいる高齢の父が心配だった。同じ方向には約30人が続いた