最初に断るが、この記事は科学者を目指す若い人たちに向けて書いている。 多くの免疫学者がその解明のために日夜努力している極めて複雑な免疫システムを、「免疫力」という一言で片付けて、あとは生活上の習慣やストレスと関連付けてわかりやすく(?)解説する本が、書店では平積みされている。 さらにこの「免疫力」という言葉を使って様々な商品を宣伝することが横行している。テレビや新聞広告を見ると、大手企業ですら「免疫力を高める・・・」という宣伝を根拠もなしに臆面もなく使っている。 このような宣伝に「免疫システムは複雑すぎるため、何を言っても問題にならない」という考えが透けて見える。 例えば今話題の抗PD-1抗体はガンの免疫力を高めると同時に、自己免疫という副作用も高めてしまう。自己免疫やアレルギーは厄介な免疫反応だが、病原体やガンに対する免疫反応は私たちを守ってくれる。このように、常に2面性を持つ免疫システ