読書感想とそれ以外とを区別して書こうと試みたのですが、うまくいきませんでした。これから先、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を初めて読むかもしれない方は、お読みにならないほうがよいと思います。内容にも触れます。 7月19日は俺にとってとても大切な日だった。今年のその日の前の日に、俺は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読み終えた。読み終えた日が7月18日であったということ、読み終えた小説が『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』であったということ。狙ったわけではないのだが、一日はなれた形で頭骨の符合が生まれた。 大切な日に、ひとりの人とお会いした。正確には、ひとりの人とお会いしたから、その日は俺の大切な日になった。 ひとりの人が口にした冗談を、俺はいまでも覚えている。「待ち合わせるときにバラの花をくわえましょうか。目印として」その街に、その駅に、一輪