まずは昔話をひとつ。 ――今は昔、信濃から出てきた命蓮という法師が東大寺で受戒したあと、河内国の信貴山に籠って厳しい修行をしていた。しばらくして聖は、厨子におさまるほどの小さな毘沙門天像を授かった。そこで小さなお堂を造って像を納め、さらなる修行に励んでいた。 この山の麓には下種徳人(げすとくにん:卑しく貧しい身分の出の長者)が住んでおり、聖の鉢はいつもその家まで飛んで行き、食べ物などを入れてもらっていた。だがある日、いつものように鉢が飛んで行くと、家の者たちは米蔵を開けて忙しく働いている最中。「また例の鉢だ。いまいましく欲張りな鉢だ」と鉢を蔵の隅に投げ置き、そのまま蔵を閉じてしまう。すると突然、蔵がゆさゆさと動きだし、宙に浮いたかと思うと山の頂上に向かって飛んで行ってしまった――。 これは、「信濃の国の聖の事」という物語の一場面である。日本四大絵巻の一つ「信貴山縁起」(13世紀、朝護孫子寺
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