入門12年目の若手講談師が東京の演芸界を沸かせている。神田松之丞、35歳。出演する講談会に客が押し寄せ、5日間の独演会が瞬く間に完売する。長く停滞していた伝統話芸に現れた新星。何が人々の気をひくのか。 11月下旬、東京・新宿末広亭。夜7時過ぎになると入場客がどっと増える。大半のお目当ては、中入り後すぐに高座へ上がる松之丞だ。大柄な男が猫背で登場すると、客席のあちこちから「待ってました!」。女性の声も交じる。二つ目にこれほど掛け声がかかるのは異例だ。 客席後方には2台の撮影カメラが。松之丞は「私の取材なんです」とうそぶいて笑わせつつ、講談はどんな芸かを説明。張り扇と扇子で釈台をたたいてリズムを取り、ささやき声で人物描写をしたかと思えば速射砲のように言葉をたたみかける。相撲ネタを緩急自在に語って「35分のところを13分でやりました」と締めると、喝采が湧いた。 講談は江戸前期に神社や盛り場で軍記
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