保守派こそ反原発を(中島 岳志) 2011/5/27 論壇を見ていると、やはり保守派の側に原発推進論が多い。しかし、私は根本的なところで疑問を感じる。保守思想の本質を吟味すると、保守派こそが原発に対して懐疑的にならざるを得ないと思うからだ。 保守思想の根源にあるのは、懐疑主義的な人間観である。人間はいつの時代も過ちを犯し続ける。人間は常に不完全であり、パーフェクトな存在として現れたことなどない。人間の理性には決定的な限界があり、完成された知性を保有したことなど一度もない。 そんな人間が構成する社会は、過去も現在も未来も、永遠に不完全な存在である。だから、保守派は「進歩」を疑う。どんなことがあっても理想社会の実現は不可能だという諦念を、保守派は共有している。 人間の理性の無謬性を疑う保守派は、人智を越えたものの中にこそ、人類の英知が詰まっていると考える。 伝統、慣習、良識、美徳……。 多くの