ただ秒読みの1分将棋という短時間で発見するのは至難の業。持ち時間が数十分あったとすれば発見できるかもしれないですが――あの対局で“勝ちを逃した”と言われるのは正直なところ酷だなというのはあります。 展開的にも豊島竜王の方が攻めていて、羽生九段の方が受けている状況でした。羽生九段の立場から見ると、薄い玉のままで攻めを受け止めれば勝ちだったのですが、豊島竜王が絶妙のプレッシャーをかけていたのです。 付かず離れずの距離感で追い詰めすぎず、微妙な間合いを取る。受け止める側としては自分の玉周辺で戦いが起きているので、一手も間違えられない。そういった駆け引きが繰り広げられているのです。 サッカーの自陣でのボール回しのように スポーツで喩えるならば……ここ近年のサッカーでは、ゴールキーパーから丁寧にパスを繋ぐチームが増えていると感じます。自陣付近でボールをしっかり回しきれれば、相手のマークを外して攻めに
![「豊島竜王と羽生九段の竜王戦で…」AI評価値の“逆転劇”とタイトル経験棋士が感じる“実際の差”(中村太地)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/97d6fd53370fd373ae646a000149fac4c080ccff/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnumber.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F2%2F2%2F-%2Fimg_22cd66b1ce271167e676c94f573b7030195290.jpg)