東京中で進む様々な都市開発。「都市緑化」は、いまや街づくりと不可分な要素として位置づけられ、新たに誕生したどの街でも、木々が風に揺られている。 森ビル設計部の技術顧問であり、新卒で入社した会社から数えて、半世紀以上にわたって都市の緑に関わってきた山口博喜さん。木々と向き合い、自然と向き合い、緑を見守り続ける半生を過ごしてもなお「都市緑化に対する答えは出ない」と言います。 緑の存在や、自然体験は、人に何をもたらすのか。その問いと向き合い続けてきた山口さんの、今の想いを聞きました。 長崎の原風景とランドスケープとの出会い ランドスケープの世界に入ったのは、社会人になってからです。子供のころは絵を描くのが好きで、中学・高校では美術部で油絵をやっていて、それで身を立てていこうと思っていた。でも、模倣を離れていざ自分の表現となると、周りには遥かに才能ある人がいて、自分では敵わないな、と挫折を経験しま