「きみは、損をしてるよ」 残業中に上司から声をかけられて、ハッとした。 私は覚えは悪いが仕事を一から理解しようと努め、黙々と働く人間だ。同期のミキちゃんと比べたら評価されにくく不憫に思われたらしい。そんなふうに見られていたとはつゆ知らず、ビックリした。 22歳、商社OLだった。 遠い人だと思っていた上司に急に親しみを感じた。思いっ切りなまりがあり、電話口ではとぼけた冗談を言っては相手を笑わせている。部下の誰からも慕われ「加藤さん、加藤さん」と呼ばれていた。係長だった。 新人だった私は気の合わない先輩から仕事を教えていただく立場だった。 「ミキちゃんは教えたことを素直に実行して覚えも早いけど、ジョヴァンナはめんどくさいことばかり訊いてきて覚えが悪い。扱いづらい」と思われているのをひしひしと感じた。 実際に「変わってるね!」と吐き捨てるように言われたことが何度かある。自分の仕事はキッチリやるが