文法化と意味の漂白化 認知言語学や言語類型論の研究において、「文法化」(grammaticalization)と呼ばれる現象に関心が向けられている。文法化とは、本来は内容語であったものが、徐々に機能語的な表現に転化していく過程である。文法化の過程の中では、「脱カテゴリー化」(decategorization)と呼ばれる品詞の転換が生じることもある。この結果、同じ語形の語が文法的にはまったく別の働きをするようになる。従来の文法指導や語彙指導では、こうした現象を別々に扱われ、ともすれば丸暗記の対象となりがちであった。しかし、一見別々に見える現象でも、文法化の概念を指導に活かすことができれば、知識の体系化を図ることができる(阿部2004)。 文法化の過程で「意味の漂白化」*1(semantic bleaching)と呼ばれる現象が起こることがある。山梨(1995)によれば、このような言語変化には