『天路の旅人』沢木耕太郎 新潮社 2022.12.22読了 第二次世界大戦末期、敵国である中国の奥深くまで潜入した諜報員西川一三(にしかわかずみ)さんのことを書いたノンフィクション作品である。西川さんは諜報員であることを隠すため、巡礼と称して蒙古人ラマ僧になりすました。しかし、もはや彼は本当に巡礼の旅をしたと言えるのではないか。天路、つまり「天へつながる道・天上にあるとされる世界・鳥や月が通る空」を旅した人、悟りを開いた人間の生き様が書かれている。 西川さんは、8年間の巡礼を終えて日本に帰ってきた後、『秘境西域八年の潜行』という総頁数にして2千頁にも達する紀行作品を書き上げた。本人による著作があるのに、何故沢木耕太郎さんは改めて彼のことを追いこの本を書いたのか。 沢木さんは西川さんと何度かお酒を飲み交わしながら話を聞くが、西川さんのことをどう書いたらいいかわからない。取材を終えた後10年程
